にしださん、ちょっと相談があるんです。昨日、後輩から話を聞いたんですけど、ちょっと気になってしまって…。
どうしたの? 話してみて。
その子、最近チーム内での相談がしづらくなってるらしくて…。
何か質問しても、上司が「知らない」とか「自分にはわからないから」って答えるだけで、それ以上がないんですって。
うんうん、それはつらいね。部下としては、「わからないです」だけ返されたら、「もうこの人に聞いても無駄だな」って感じてしまうかもね。
そうなんです。後輩も「上司は嘘をついてるわけじゃない。むしろ正直だと思う」って言ってたんですけど…でも、その正直さがかえって“壁”みたいに感じるって。
それ、すごく鋭い指摘だね。
実は、心理学でも似たテーマがよく扱われていてね。「自己開示」と「役割の境界」っていう概念が関係してくるんだ。
自己開示…って、たしか“自分のことを相手に話すこと”ですよね?
そうそう。自己開示は信頼関係を築くうえで大切なんだけど、上司が「知らない」ってだけ言うと、そこには“対話”や“関与”がない状態になってしまう。つまり、「私はこれ以上関わらない」というメッセージにも聞こえてしまうんだ。
たしかに…そう聞こえますね。後輩も「相談を切り捨てられた感じがする」って言ってました。
“正直”って大事だけど、「知らない」で終わらせずに、「一緒に考えよう」や「誰かに聞いてみようか?」っていう言葉を添えるだけで、関係性ってすごく変わるんだよ。
上司も全部に答えられないのは当たり前だけど、“無関心”に見えると、部下は安心して頼れなくなっちゃいますね。
そう。部下の側から見ると、「質問しても無駄」「放っておかれている」と感じることで、心理的安全性が下がるんだよね。
これはハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が提唱した概念で、「ミスを恐れず発言できる」「困ったときに助けを求められる」状態が、チームのパフォーマンスに直結するって言われてるよ。
なるほど…。その後輩も、最近は質問するのをあきらめて、一人で抱えるようになってるって。結果的に、部内ではミスが起きてから報告されることも増えたって言ってました。
それってまさにサイレント組織の始まりかもしれない。
表面上は静かだけど、実はお互いに遠慮と不信感が積み重なっている。特に若手や経験の浅い人にとっては、相談しづらい空気はとても大きなプレッシャーだよね。
さらに、この風通しの悪い「サイレント組織」が、従業員のエンゲージメントを低下させ、「静かな退職」という行動を引き起こすという可能性もあるよね。
エンゲージメントが低下した結果、従業員は会社や仕事に対して過度な期待や努力をすることをやめ、自分を守るために「静かな退職」という働き方を選択。そうすると負のスパイラルにもなる。
後輩も、「上司は責めたくないけど、話しかけるのが怖くなってきた」って…。
スーちゃん、今の話を聞いていて気づいたことがあるよ。
「正直さ」や「できないことを認める勇気」って、個人としてはとても誠実な行動。
でも、それがチームという“場”においてどう作用するかを考えたとき、役割としての上司という視点も持つことが大事なんだ。
つまり、「自分がどう感じているか」だけじゃなくて、「相手にどう影響を与えるか」を考えるってことですね?
そう、その通り!たとえば「知らないけど一緒に考えよう」とか、「これ、○○さんなら詳しいよ」と“つなぐ力”を持てると、部下の孤立を防げる。
そして、そういう言葉って信頼を育てる種になるんだよね。
ちなみに、今回の話でいちばん大事なポイントはね、「“知らない”“できない”と返す上司が悪い」じゃないんだ。
本当の問題は、それを“放置する組織”の側にあるんだよ。
えっ…放置する組織…?
そう。たとえば、「分からないって言ってたな。管理職研修の見直しを検討してみよう」「わからないことは、チームで調べる仕組みにしておこう」
そういう動きができれば、“分からない”が起点になってチームの力が強くなる。
でも実際には、「あの人頼りないよね」で終わってしまう。それじゃあ、何も変わらない。
なるほど…。
“分からない”って、本当はチームにとっての大事なサインなんですね。
そう、「分からない」と言える環境があるなら、そこに“協働する姿勢”と“共有する仕組み”が整えば、組織は強くなる。
問題は個人ではなく、関係性や仕組みのほうにある。
だからこそ、個人の正直さを“壁”にせず、“成長の入口”に変えられる組織でありたいよね。
私も、これから何か相談を受けたら、「知らない」で終わらせないようにしようって思いました。答えられなくても、「一緒に探してみよう」って言える自分でいたいなぁ。
その気持ちがあればきっと大丈夫。誰かの「知らない」から、次の対話が始まる。そんな職場のほうが、長い目で見て強いチームになるんだと思うよ。
「知らない」って言葉、その奥にある“関係性”の大切さに気づけました。
言葉の選び方ひとつで、「頼ってもいい」って思える空気も、「もう話しかけたくない…」って壁もできちゃうんですね。
私も、相談されたときに“ひとりにしない姿勢”を忘れずにいたいです。誰かの安心のきっかけになれるように心配がけていきます。
上司やリーダーの「正直さ」が、組織に安心感をもたらすのか、壁を作るのか。
それは、たった一言の“次のアクション”にかかっているかもしれません。
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