現代社会では「自分らしく生きる」ことが推奨される一方で、「自分勝手」と誤解されることも少なくありません。
では、この二つはどこで分かれるのでしょうか?
心理学の視点から考えてみます。
心理学者アブラハム・マズローは、
人間の欲求階層の最上位に「自己実現」を位置づけました。
自己実現とは、自分の可能性を最大限に発揮し、充実した人生を送ること。
しかし、それは「他者を無視して好き勝手に生きる」ことではありません。自己実現する人は、自分の価値観を大切にしながらも他者への配慮を忘れません。
心理学では「エゴイズム(自己中心性)」と「自尊感情(健全な自己愛)」を区別します。
自分らしく生きるためには、まず自分を大切にすることが重要です。
しかし、エゴイズムが強くなりすぎると、「自分の価値観だけが正しい」「他人の意見は関係ない」といった極端な考え方になり、自分勝手な行動へとつながります。
社会心理学では、人間関係のバランスを「独立(他人に頼らない)」「依存(他人に依存する)」「相互依存(互いに支え合う)」の三つに分類します。
自分らしく生きるためには、相互依存の関係が鍵となります。
つまり、自分の考えを持ちながらも、他者の気持ちを尊重し、支え合う姿勢が大切なのです。
「自分らしさ」は、自分の軸を持ちながらも、他者との関係を大切にすることで成り立ちます。
逆に、他者の意見を無視し、自分の欲求だけを優先する姿勢は「自分勝手」となり、人間関係に摩擦を生みます。
本当の意味で「自分らしく生きる」とは、
「他者に迷惑をかけずに、自分の価値観を大切にすること」。
そのバランスを意識することが、より良い人生につながるのではないでしょうか。
仕事の場面を例に考えてみました
Aさん:
「自分らしく働きたい」と考え、効率を重視して定時で退社するようにしている。
しかし、チームの仕事が終わっていないときは、協力できる部分をサポートする。
⇒自分の考えを大切にしつつ、周囲も配慮
Bさん:
「私はマイペースだから」と言い、締め切り間際でも気にせずに好きなタイミングで仕事をする。結果、他のメンバーがフォローに追われる。
⇒自分の都合を優先し、周囲への影響を考えない
このように、「自分らしく」と「自分勝手」は全く異なりますね。
本当の意味で「自分らしく生きる」とは、
自分と他者のバランスを意識しながら生きることなのかもしれませんね